ネパールを代表する料理といえば、やはりダルバートでしょう。
私がカトマンズに半年ほど勤務していた頃、ほぼ毎日のように口にしていたのがこの料理でした。
ステンレスの丸いプレートに、ご飯、豆のスープ、野菜のおかず、漬物、水牛の干し肉などが並びます。値段も手頃で、ご飯と豆のスープは足りなければ追加してくれます。
ダルバートは「ダル(豆のスープ)」と「バート(ご飯)」という意味で、ネパールの人々にとって日々の食卓に欠かせない料理です。
日本で言えば、ご飯と味噌汁のような存在かもしれません。
豆のスープはほどよい塩気と、ほんのりとしたニンニクの香りがあり、毎日食べても飽きません。むしろ食べるたびに、ほっとする。そんな料理でした。
現地での暮らしに慣れてくると、私も現地の人たちと同じように右手を使って食べるようになりました。最初はぎこちなかったものの、それもまたネパールの生活に溶け込んでいく実感のひとつでした。
ネパールは多くの民族やカーストによって成り立つ国で、それぞれに食文化の個性があります。
カーストによって食べられる肉の種類が決まっていることに驚いたのを覚えています。
その中でも、私が特に好きだったのがタカリ族のダルバートでした。
タカリ族のダルバートは、味付けのバランスが絶妙です。豆の旨味、スパイスの香り、野菜の滋味が見事に調和し、ご飯もダマになることなく、ふっくらと炊き上がっています。派手さはないのに、ひと口ごとにじんわりと美味しさが広がります。
カトマンズでもタカリ料理店は人気で、私にとっては少し特別なごちそうでした。
日本に帰国してからも、ときどき無性にダルバートが恋しくなります。
これまで神奈川県の蒲田や、東京の新大久保まで食べに行きました。
蒲田でも十分美味しいダルバートに出会えましたが、私の好みにより近かったのは新大久保でした。
蒲田に比べると値段は少し高めではあるものの、ネパールで食べたものに近い、本格的な味わいがあります。ひと口食べると、カトマンズの喧騒や街角の食堂の空気が、ふっと蘇ります。
料理には、不思議な力があると思います。
ただ空腹を満たすだけでなく、その土地で過ごした時間や、人との出会いまで運んできてくれる。
私にとってダルバートは、ネパールそのものを思い出させてくれる、大切な味なのです。
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