1 当初の予定
本当は、山形県東根市の黒伏山に登るつもりでした。
ところが、あいにくの雨。
黒伏山には渡渉する場所があるのですが、雨の影響で川が増水し、流れもかなり急になっていました。
以前の私なら、「せっかく来たのだから」と、多少の無理をして渡っていたかもしれません。
しかし、今回は諦めました。


歳のせいでしょうか。最近は、無理をしなくなりました。
山は逃げません。また天気の良い日に来ればいい。
そう考えて、向かったのが山形県舟形町の猿羽根山です。
2 標高180mの猿羽根山
猿羽根山の標高は、わずか180m。
登山というより、ちょっとした散策のような気持ちで歩き始めました。
舟形駅から山頂までは、ゆっくり歩いて約1時間。
登山道もよく整備されていて、気持ちよく歩くことができました。
ところが、山頂に近づくにつれて、思いがけない景色が広がってきました。
葉山や甑岳がよく見え、その下には最上川と舟形町の町並みが広がっています。
標高180mとは思えないほどの眺望です。

黒伏山には登れませんでしたが、これはこれで良かった。
雨の日に無理をして危険な場所を渡るより、こうして安全な山をのんびり歩くほうが、今の自分には合っているのかもしれません。
良い気分転換になりました。
3 帰り道に出会ったタヌキの親子
そして、この日の一番の出来事は、山頂からの景色ではありませんでした。
帰り道、舟形駅の近くで、タヌキの親子に出会ったのです。
母ダヌキと目が合いました。
すると母ダヌキは、2匹の子ダヌキをせかすようにして、道路を渡らせようとしています。
1匹目は、すんなり道路を渡りました。
そして、そのまま母ダヌキについて茂みの中へ。
ところが、もう1匹がなかなか大変でした。
どうやら用水路に落ちていたらしく、なんとか這い上がってきたものの、道路の上をウロウロ。
おまけに、今度は納屋に入ろうとしています。
「そっちじゃないだろう」
思わず、そう言いたくなるほど要領が悪い。
しかも私のことをあまり警戒していません。
こちらがカメラを向けても逃げようとせず、無防備な姿を見せています。


天敵に見つからないだろうか。
車に轢かれたりしないだろうか。
見ているこちらが心配になるほどでした。
4 なんだか、自分に似ている
そんな子ダヌキを見ているうちに、ふと思いました。
「どちらかというと、私に似ているな」
何でも要領よくできるタイプではありません。
遠回りをしたり、失敗したりしながら、少しずつ覚えてきたような気がします。
だからこそ、あの子ダヌキにも、なんとなく親近感を覚えました。
要領が悪くてもいい。
危ない目に遭ったり、失敗したりしながら、「これは危ない」「こっちに行ったほうがいい」と少しずつ覚えていけばいい。
たくさん経験して、そこから教訓を学びながら生きていってほしい。
そんなことを思いながら、子ダヌキが母親のあとを追って茂みに消えていくのを見送りました。
振り返ってみれば、この日の山歩きも同じだったのかもしれません。
黒伏山に登ることを諦めたのも、これまでの経験から「今日は無理をしないほうがいい」と判断できたからです。
若い頃には、無理をすることが経験になることもあります。
でも、歳を重ねると、無理をしないこともまた、経験から学んだ大切な知恵なのかもしれません。
猿羽根山に登ったことよりも、最後に出会った一匹の子ダヌキのほうが、なぜか心に残る一日となりました。
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