見慣れた黒伏山に、自然の厳しさを教えられた

ハイキング

1 黒伏山(くろぶしやま)について

山形県東根市にある黒伏山。標高は1,226メートルです。

今回は2度目の挑戦です。前回は、沢の増水のために断念しました。

前回の記事はこちら。「無理をしないことも、経験のひとつ――猿羽根山と子ダヌキ

スキー場から見た黒伏山(奥の山)

近くにはスキー場があり、冬には何度も目にする山です。見慣れた山ということもあり、標高もそれほど高く思っていませんでした。

そのため、今回の登山は、最初はそれほど難しいものだとは考えていませんでした。

むしろ、少し気楽な山歩きのつもりで、レトルトの豪華なランチまでザックに詰めて出かけました。

ところが、登山口に入ってすぐ、その考えが甘かったことに気づかされます。

2 登山口から、いきなり渡渉

登山口から歩き始めて間もなく、沢を渡る場所がありました。

水深は膝下ほどだったと思います。

しかし、問題は水深ではありませんでした。

流れがかなり速いのです。

足を取られれば危険です。慎重に渡り、ようやく登山道の先へ進みました。

今回の渡渉点 向こう岸に渡らなければなりません。

その後も、気楽な山歩きとはいきませんでした。

登山道には、春に下草を刈ったと思われる跡がありました。しかし、そもそも登山者が少ないのでしょう。草や枯れ葉に覆われ、登山道が分かりにくくなっている場所があります。

踏み跡を探し、木々につけられた目印を確認しながら、慎重に進みます。

普段の登山なら、前を歩く人の姿や明瞭な登山道を頼りに、あまり考えずに歩いていることもあります。

しかし、この日はそうはいきません。

「この先で合っているだろうか」

そんなことを何度も確認しながら歩きました。

目印と踏み跡を慎重にたどる

3 黒伏山山頂へ

慎重に登り続け、ようやく黒伏山の山頂に到着しました。

山頂は、植生により眺望はありません。

時間は、おおむね「山と高原地図」に掲載されているコースタイム通りでした。

普段は荷物を軽くして登ることが多いので、コースタイムより早く歩けることもあります。

今回は荷物もそれなりに重く、登山道も分かりにくかったため、ほぼコースタイム通りになりました。

山頂に立ったところで、このまま来た道を引き返すか、それとも縦走するか、少し迷いました。

ライトは持ってきていないので、日没までには下山しなければなりません。

しかし、ランチを食べたことでザックは軽くなっています。

行動食も水も十分にあります。

そして、体力的にもまだ余裕がありました。

そこで、予定通り白森山、銭山、福禄山を経由して縦走することにしました。

4 霧の中の縦走、そして下山への分岐

黒伏山から先は、白森山、銭山、福禄山へと続く縦走路です。

普段なら、眺望を楽しみながら歩ける場所なのでしょう。

ところが、この日はあいにくの霧。

周囲は白く霞み、遠くの景色はほとんど見えません。

せっかくの縦走なのに、少し残念です。

しかし、眺望がないことで、別の意味で登山に集中することになりました。

特に注意したのが、縦走路から登山口へ向かう分岐です。

ここを間違えるわけにはいきません。

霧の中では周囲の景色を目印にすることもできません。

そこで、方位磁針を使い、歩いた距離を歩数から推測しながら、分岐の位置を慎重に確認しました。

無事に分岐を見つけたときは、ほっとしました。

分岐の表示

5 下山中でも、気は抜けない

あとは下山するだけ。

そう思いたいところですが、最後まで気を抜くことはできませんでした。

崩落した場所をトラバースするところがあり、登山道が不明瞭な場所もあります。

さらに鎖場もありました。

そして、最後には再び渡渉。

登り始めた直後にも沢を渡りましたが、帰りも沢を渡らなければなりません。

こうして振り返ってみると、この日の登山は、最初から最後まで緊張感のある山行でした。

かかった時間は、休憩を含めて6時間40分。

出発前には「今日はそれほど大変ではないだろう」と思っていたのに、終わってみれば、かなりハードな一日になっていました。

6 山の難しさは、標高だけではない

山形会議パブリッシングの『やまがた百名山』によると、黒伏山の技術などのグレーディングは、5段階のうち下から2番目です。

つまり、技術的にはそれほど難しい部類の山ではありません。

それでも、今回の山行では、普段以上にさまざまなことを考えながら歩きました。

踏み跡を探す。

目印を確認する。

地形を読む。

方位磁針で方向を確認する。

歩数から距離を推測する。

沢の流れを見て渡る場所を判断する。

そして、体力を最後まで維持する。

まさに、これまで身につけてきた知識や経験、五感、そして体力を総動員した山行でした。

黒伏山は、標高1,226メートル。

決して高い山ではありません。

スキー場の近くにあり、私にとっては見慣れた山でもあります。

だからこそ、どこか油断していたのかもしれません。

今回の山行で改めて感じたのは、**「山を侮ってはいけない」**という、ごく当たり前のことでした。

標高が低いから安全とは限らない。

見慣れた山だから簡単とも限らない。

そして、地図上ではそれほど難しくないコースでも、その日の天候や登山道の状態、登山者の少なさなどによって、山の表情は大きく変わります。

気楽な登山のつもりで出かけた黒伏山でしたが、下山する頃には、自然に対する謙虚さを改めて教えられたような気がしました。

今回の6時間40分は、単なる山歩きではなく、山と向き合うための良い経験になりました。

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